狭山茶の起源を知る

首都東京にほど近い埼玉県で生産されていることもあり、知名度の高い狭山茶ですが、一体いつ頃から生産され、世の中で親しまれていたものなのでしょうか。

 

その由来は諸説あるようで、最も古い記録によると1200年代にまで遡るようです。1200年代と言いますと鎌倉幕府やチンギス・ハーンの時代ですから、相当昔から飲まれているのは間違いなさそうです。

 

世界的には「未発見の」狭山茶

狭山茶は埼玉県を中心に栽培されている日本茶の総称です。12世紀頃に寺院で薬用茶の栽培がはじまり、1800年代半ばには飲用茶の栽培が広く行われるようになりました。東京の縁辺に位置するために、高度経済成長期には激しい都市化の圧力にさらされましたが、それにのみ込まれることなく、200軒の茶園が今なお狭山茶を作り続けています。

 

狭山茶は埼玉県南西部の入間市、狭山市、所沢市を中心に栽培・製造されています。寒冷な気候で栽培される狭山の茶は、葉が厚く、重厚で奥深い香りとコク、甘味を持っています。

世界的には、大量生産地である静岡や抹茶を生産している宇治が良く知られています。狭山は小規模農家が多く、生産量も全国生産の2%(平成30年度生葉)しかないために、これまで海外への輸出はおこなってきませんでした。

 

しかし小規模の農家が大切に育てた茶葉を、自分の工場で丁寧に茶に仕立て、販売をする「自園・自製・自販」方式は、いやがうえにも質の高いお茶を産み出します。

色は静岡、香りは宇治よ。味は狭山でとどめさす

古くより謳われてきたこの唄は、「狭山茶作り唄(入間地方)」で歌われるとされていますが、出典は不明です。

 

入間地方で言い伝えられていた俚諺とされています。一説には茶業者が狭山茶のPRのために作ったのではないかともいわれますが、あながち間違いではないかもしれませんね。

 

科学的データに基づいて表現されたものではありませんが、近年に含有成分の調査も行われてきました。

 

東京家政学院大学の調査結果によりますと、京都,埼玉県,京都府宇治市の各茶専門小売店,それぞれ3店舗において、100 gあたり 500、1,000、1,500円のものを合計27試料購入し、成分を分析したところ、それぞれの小売店が最も品質に気を配っていると考えられる100gあたり、1,500円のものの,遊離アミノ酸、カフェイン、タンニンの3成分の含有量を比較してみると、いずれの成分も宇治茶が少なく、狭山茶はカフェイン、タンニンは最も多く、アミノ酸も静岡茶にほぼ匹敵するなど、成分が豊かであることが分かります。

この結果から、狭山茶は他産地と比べて旨味、苦味、渋みの強い、濃厚なおいしいお茶であることは間違いないようです。


日本家政学会誌 Vol.40 No.3 より抜粋
日本家政学会誌 Vol.40 No.3 より抜粋

自園・自製・自販だからこその多様性

狭山では家族経営の小規模農家が、自分の茶園で栽培した茶葉を、自工場で製茶し、販売まで行っています。

これは各地から茶葉を集荷し、共同加工、協同保管、大量取引によって出荷される大規模生産地にはない特徴です。各茶園が生産するお茶の味は、一軒ごとに異なり、狭山茶地域全体では、実に200以上の違った味の日本茶がつくられていることになります。この多様性は、狭山茶の大きな魅力の一つです。

 

多種多様に存在する狭山茶の中から自分好みの一杯に出会う、そんな奇跡を楽しんでいただきたいと考え、NPO法人 埼玉農業おうえんしたいでは、2018年から「狭山茶 SINGLE ORIGIN TEA ブランド化戦略プロジェクト」を開始しました。