「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」古くからこのように謳われ、味に定評がある狭山茶ですが、その由縁はどこにあるのでしょうか。
静岡、宇治、狭山の市販茶やぶきた90%以上のものの成分を比較した研究報告があります。
狭山茶の新規機能性開発を目指した探索的研究(第3報) (温故知新プロジェクト)
このレポートのなかで、「狭山茶は、静岡、宇治と比べて標準熱抽出中のカテキン含量が有意に多く、また同時に標準熱抽出中の全糖量が有意に多いため、カテキンによる高い薬理効果を示しつつも、その渋みを糖類による効果で抑制しているとしている」と書かれています。
これらの報告から、価格や品質、生産園によって成分値は大きくことなるため、狭山茶はこうだと言い切ることは難しいものの、濃厚で苦く、渋いものの、糖類による効果でその渋みを抑制した「味」を特徴とするお茶である点を示すデータが報告されていると言えるのではないでしょうか。
味は狭山でとどめさすと謳われた狭山茶ですが、狭山茶はすべての工程(茶葉の生育〜販売まで)を一つの製茶園で完結しています。全国でもなかなか珍しいこの自園・自製・自販農家は、自宅および工場の近くに茶畑を持っています。遠くてもせいぜい500m範囲の中に位置します。
茶葉は、摘み取られてからすぐに熟成が始まり、発熱しますが、工場の近くに茶畑があることで、この熟成・発熱を抑えて蒸し工程に入ることができます。これは茶のクオリティーに大きく影響します。フードマイレージがほぼ0に近いことが狭山茶の最大のメリットとも言えるでしょう。
また、狭山はお茶の産地としては日本で最も北に位置しています。そのため、茶葉が他産地に比べて厚みがあるいるといわれます。これは、厚みがあることでより多くの成分を含有しているともいえるかもしれませんね。
狭山茶では、特定農園の単一品種茶が数多く栽培されています。品種茶は今や100種類を超えるといわれていますが、特定の農園で単一の品種だけで作ったお茶を単一品種茶と呼びます。
同じ品種でも、栽培、製造する農園が違うと、違う味の茶ができますので、農園を特定した単一品種茶を私たちは商品として扱っています。
単一品種茶は、当然ながらそれぞれ成分含有量や味、香りが異なります。自分の茶の好みを見分けることも可能ですし、品種茶の違いを理解すれば、自分で自分好みのブレンド茶が作れます。
「おくはるか」はクマリンという成分が多少多いために、桜葉の香りがするといわれています。
また、「とよか」「ほくめい」「さやまかおり」などはカテキン成分が他に比較して多いので、苦み・渋みが強いとか、「ふくみどり」などはテアニン成分が比較的多く、うまみが強いとも言われます。それぞれの品種に特有の個性があるということです。
ただ、この含有成分は、採取時期によっても多少異なりますし、年によっても違いますので明快に言い切ることは難しいです。だからこそ、自分好みの品種に出会い、毎年の違いを楽しめるとより一層豊かなお茶ライフが味わえます。